唐突なんですが、ボードゲームを買いました。
しかも、自分のお金で自分のために買った人生初のボードゲームです。子どもの頃に家族で人生ゲームやオセロをやった記憶はあるんですが、「ボードゲームという趣味」としてちゃんと自分で選んで買ったのは、これが本当に初めて。完全なる初心者です。
きっかけはSNSでした。誰かのプレイ記録の写真が流れてきて、テーブルの上に世界地図みたいな盤面が広がっていて、その横で大人が真剣な顔で相談している・・・それがやけに楽しそうに見えたんですよね。スマホゲームみたいに一人で完結するんじゃなくて、目の前に「物」があって、人と顔を突き合わせて遊ぶあの感じ。あれが欲しい!と思ってしまったわけです。
ボードゲームを買おうと思ったきっかけ
いざ調べ始めると、ボードゲームの世界って本当に広いんですね。広すぎて、最初の一台を何にするかで数日迷いました。「初心者 おすすめ ボードゲーム」で検索しては、レビューを読み漁る日々・・・。

そんな中で最終的に選んだのが、この『アンドールの伝説』でした。
決め手は「物語があるボードゲーム」というところ。ただ勝ち負けを競うんじゃなくて、ファンタジーの世界を冒険してストーリーが進んでいく、いわばRPGがそのままテーブルに乗っかっているらしいんです。ゲーム好きとしては、この一点でグッと心を掴まれました。
あと、対戦じゃなくて全員で協力するゲームだというのも大きかったです。初心者が経験者にボコボコにされて終わる・・・みたいな悲しい展開にならなさそうですしね!
というわけで、この記事は「ボードゲーム完全初心者が、初めての一台に『アンドールの伝説』を選んでみた感想」です。同じように最初の一台で迷っている方の参考になれば嬉しいです。
そもそも『アンドールの伝説』ってどんなゲーム?
まずは基本情報から。『アンドールの伝説』は、ドイツのミヒャエル・メンツェルさんがデザインした協力型のファンタジー冒険ボードゲームです。
しかもこのメンツェルさん、ゲームのデザインだけじゃなくて箱やボードのイラストまで自分で描いているんだとか。だから世界観に統一感があるんですね、後で納得しました。
そしてこのゲーム、ただのマニアックな作品ではなくて、2013年にドイツ年間ゲーム大賞のエキスパート部門で大賞を受賞しているんです。ボードゲームの世界では、このドイツ年間ゲーム大賞というのはかなり権威のある賞らしくて、その「ちょっと歯ごたえのある作品向け」の部門で大賞を獲っている、と。初心者の私にはその凄さの実感はまだ薄いんですが、要するに「お墨付きの名作」ということでいいんだと思います。

スペックはこんな感じです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プレイ人数 | 1〜4人(なんと一人でも遊べる!) |
| プレイ時間 | 60〜90分 |
| 対象年齢 | 10歳以上 |
| ジャンル | 協力型・冒険・ファンタジー |
注目してほしいのが、一人でも遊べるという点。協力ゲームなのにソロプレイに対応しているのは、初心者にとってめちゃくちゃありがたかったです(理由は後ほど)。
ゲームの目的をざっくり言うと、プレイヤーはそれぞれ勇者になって、アンドールという王国に攻め込んでくるモンスターたちを食い止めながら、与えられた物語のミッションをクリアしていきます。勇者は戦士・射手・魔法使い・ドワーフの4種類がいて、それぞれ得意なことが違うんです。誰がどのキャラを担当するか、というところからもう相談が始まります。
そして敵であるモンスターたちは、プレイヤーのことなんてお構いなしに、ひたすらアンドールのお城を目指して進軍してきます。こっちが何をしていようと、毎日少しずつ城に近づいてくる・・・これがじわじわ効いてくる、後で語る「焦り」の正体です。
開封の儀。物量に圧倒される
さて、ここからは開封の話。
正直に言うと、箱を開けた瞬間ちょっとビビりました。

まず、ボードがデカい。広げると食卓を堂々と占拠します。しかもこのボード、両面仕様になっていて、物語によって使う面が違うんだとか。表と裏で別の地図になっているのを見て、「えっ、一枚で二度おいしいの?」と地味に感動しました。
そして地図が、ただの抽象的なマス目じゃないんです。森があって、川があって、お城があって、井戸があって、ちゃんと一つの「世界」として描かれている。デザイナー本人が描いているというのが効いていて、見ているだけで「この森には何かいそうだな」なんて想像が膨らみます。

勇者のコマやキャラクターボードも、それぞれちゃんとキャラが立っています。戦士はいかにも頼れる感じ、魔法使いはローブを纏った知的な雰囲気、という具合に、見た目だけで「こいつはこういう役割だろうな」と伝わってくる。この「触れる」「眺められる」という感覚が、デジタルゲームにはない物理的な良さだなと、初っ端から実感しました。

ダイスや各種マーカーといった小物類も、一つひとつ手に取ってしまいます。なんというか、開封している段階ですでに楽しい。これは予想外でした。ゲームを始める前から「物を所有する喜び」があるとは思ってなかったです。
そして問題の——

物語カード。これがこのゲームの心臓部です。裏面にAだのBだのとアルファベットが振られたカードがたくさんあって、これを順番にめくって読み上げていくことで物語が進んでいきます。最初は「ふーん」くらいに思っていたんですが、実際に遊んでみると、この仕組みがこのゲームの面白さの全部だと言ってもいいくらいでした。これは後でたっぷり書きます。

で、ルールブック。これを開いた瞬間、正直ちょっと後悔しかけました。「初めてのボードゲームにしては、難しいの選んじゃったかな・・・」と。
でもこれが、まったくの杞憂でした!
ルールは「読む」より「やりながら覚える」
ここが、このゲームを初心者に勧めたい最大のポイントかもしれません。
『アンドールの伝説』、全ルールを暗記してから始める必要がないんです。
どういうことかというと、最初の物語(伝説1)が、そのままチュートリアルになっているんですね。ゲームを進めると、必要なタイミングで「次はこれをやってね」と物語カードが教えてくれる。だから分厚いルールブックを最初に全部読み込まなくても、とりあえず最初のカードをめくって読み上げれば、ゲームが勝手に始まってしまいます。

実際、私も「えいや」でカードを読み上げてみたら、「勇者たちは○○に集まった」みたいな導入から始まって、気づいたら冒険がスタートしていました。最初は本当に簡単なことしか要求されません。コマを動かす、井戸で水を汲む、くらいの基本動作から入って、慣れてきた頃に戦闘が出てきて、さらに進むと「実はこういうミッションだった」と本当の目的が明かされる——という構成になっています。
この段階的に複雑になっていく設計が、本当によくできています。初心者が一度に処理しきれない情報を、ゲームの方が小出しにしてくれる感じ。おかげで「ルールが分からなくて止まる」というストレスがほとんどありませんでした。疑問に思ったことも、ルールブックの該当ページを見れば書いてあるので、迷子になることもないです。
経験者の友人を呼ばなくても、初心者だけで始められる。これは大きいですよ。「経験者がいないと始められない」って、初心者にとっては地味に高いハードルなので。

そしてもう一つ、覚えておくべき重要な仕組みが「語り手コマ」と「物語トラック」です。盤面の端に、AからNまでのマスが並んだトラックがあって、ゲームが進行すると白い語りてコマがこのトラックの上をA→B→C・・・と進んでいきます。そして特定のマスに到達するたびに、対応するアルファベットの物語カードをめくる。つまり、このコマの進行が物語の進行そのものなんですね。
で、この語り手コマがいつ進むかというと——ここがこのゲーム最大の罠なんですが、後でじっくり書きます。先に、実際のプレイの話をさせてください。
いざ冒険へ。物語が動き出す瞬間

セットアップを終えて盤面が完成した瞬間の高揚感、これはぜひ味わってほしいです。地図の上に勇者のコマが立ち、モンスターが配置され、各種マーカーがセットされる。それだけで、もう物語の世界が目の前に立ち上がってくるんです。

実際に遊んでみて一番驚いたのは、物語カードを読み上げると、ゲームが「お話」になるということでした。
最初は半信半疑だったんですが、語り手コマが進んで新しい物語カードをめくり、それを声に出して読み上げる。すると「敵の増援が現れた」とか「新たな任務が課せられた」とか、状況がガラッと変わるんです。地図が劇的に変化したり、それまで「モンスターを倒せばいいのかな」と思っていたら「実は本当の目的はこれだった」と判明したり。読み上げるたびに、自分たちが本当にその世界の住人になって、物語の渦中にいるような感覚になります。
これは、ただルールを処理しているのとは全然違う体験でした。「次のカードに何が書いてあるんだろう」というワクワクが、ゲームを前に進める原動力になります。RPGをボードゲームでやる、という触れ込みは伊達じゃなかったです。

そして、緊張感もすごいんです。さっき書いたとおり、モンスターたちはプレイヤーを無視して、ひたすらお城を目指して進んできます。一定の条件で城に攻撃が届いてしまうと、それはこっちの負けに直結する。だから「あのモンスターはまだ放っておいていいかな? いや、もう城に近すぎるから今倒さないとマズい!」みたいな判断を、常に迫られます。

戦闘はダイスを振って解決します。勇者の戦力とモンスターの抵抗力をぶつけ合って、相手の意志力を0にできれば勝ち。ダイスゲームなので運の要素はもちろんあるんですが、このゲームの面白いところは運だけじゃ勝てないという点です。誰がどの順番で、どのモンスターを、いつ叩くか。アイテムをどう使うか。立ち回りを間違えると、ダイスの目が良くても普通に負けます。逆に、ちゃんと考えて動けば、運が多少悪くてもなんとかなる。この「戦略でカバーできる」バランスが絶妙だなと感じました。
このゲーム最大のジレンマ「倒したいのに、倒したくない」
さて、いよいよ語り手コマの話です。これが、このゲームを語るうえで絶対に外せない核心部分。


何が起きるかというと——モンスターを倒すと、語り手コマが1マス進むんです。
最初これに気づいたとき、頭が真っ白になりました。
だって、考えてみてください。モンスターは城に攻め込んでくる敵です。普通のゲームなら、敵は見つけ次第どんどん倒すのが正解のはず。ところがこのゲームでは、モンスターを倒すたびに語り手コマが進む。そして語り手コマが進むということは、時間が進むということ。物語が終わりに近づくということ。つまり、倒せば倒すほど、ミッションを達成する前にタイムオーバーで終わってしまうリスクが高まるんです。
これがもう、本当に悩ましい・・・!「目の前のこのモンスター、倒したい。倒さないと城が危ない。でも倒したら時間が進んで、本来やるべきミッションが間に合わなくなるかも」。倒すべきか、見逃すべきか。この究極の選択を、ゲーム中ずっと突きつけられ続けます。

普通の感覚で「敵は全部倒すぞ!」とやっていると、見事に間に合わなくなって負けます。実際、私も初プレイでは「敵を倒すのが正義」という固定観念から抜け出せず、せっせとモンスターを狩り続けた結果、本来のミッションを達成できずに敗北しました。「えっ、倒したのに負けたの!?」という、初心者には衝撃の体験でした。
でも、ここでこのゲームの設計の上手さに気づくんです。この「倒したいのに倒したくない」というジレンマこそが、ただのダイスゲームをグッと深い戦略ゲームに引き上げている。最小限の戦闘で、必要なところだけ的確に処理して、本来のミッションに資源を割く。この見極めができるようになると、勝率が一気に上がります。負けて学んで、また挑戦したくなる。協力ゲームだから、仲間と「さっきはあそこで倒しすぎたよね」と反省会もできる。これがまた楽しいんですよ。
勝っても負けても、また遊びたくなる

そんなこんなで、初プレイは敗北。でも不思議と悔しさより「もう一回やりたい!」が勝りました。
協力ゲームの良さって、負けても誰のせいでもないところだと思うんです。対戦ゲームだと「お前のせいで負けた」みたいな空気になりがちですけど、協力ゲームは全員が同じ船に乗っているから、負けても「次はこうしよう」と前向きになれる。一人で抱え込まずに、みんなで作戦を練り直せる。この感覚が、初心者の私にはすごく心地よかったです。
そして2回目の挑戦。今度は「倒しすぎない」を意識して、必要な戦闘だけに絞りました。すると、ギリギリのところでミッションを達成できたんです!語り手コマがあと少しで終端に届きそうな、本当にヒリヒリした展開での勝利。あの達成感は、なかなか言葉にできません。運だけで勝ったんじゃなくて、ちゃんと考えて勝った、という手応えがあるから、喜びもひとしおでした。
気づいたら、2時間近く経っていました。スマホもほとんど触らず、ずっと盤面と物語に没頭していた・・・こんなに集中して「遊ぶ」という体験、いつ以来だろう。デジタルな刺激に慣れた頭が、久しぶりに「アナログの濃さ」を浴びた感じがしました。
ちなみに、一人でも遊べるという話を最初にしましたけど、これも実際にやってみました。勇者を複数人ぶん自分で操作する形になるんですが、これが意外と成立するんです。むしろルールをじっくり確認しながら自分のペースで進められるので、初心者の練習台としてソロプレイはかなりおすすめ。本番で人を呼ぶ前に、一人でこっそり予習しておくと当日スムーズに進行できますよ。
初めての一台として、正直どうだった?
結論から言うと、大正解でした。
ボードゲーム初心者が最初の一台を選ぶとき、よく「軽くて短いゲームから始めよう」と言われます。それはそれで正しいと思います。実際、30分くらいで終わる軽いゲームのほうが、最初のハードルは低いでしょう。
でも、私みたいに「どうせやるならガッツリ世界に浸りたい」「物語を体験したい」というタイプには、『アンドールの伝説』はものすごくハマると思います。プレイ時間は60〜90分とそれなりに長いですが、その長さが苦にならない。むしろ「もっと冒険していたい」と感じるくらいでした。
良かった点を整理すると、こんな感じです。
- ルールを段階的に覚えられるので、初心者だけでも始められる
- 物語があるから没頭できる。ただの作業にならない
- 協力ゲームだから、初心者が一人負けして惨めになることがない
- 運だけじゃない戦略性があって、勝ったときの達成感が大きい
- 一人でも遊べるので、予習も復習もできる
- そして何より、コンポーネントを眺めているだけで楽しい
逆に、気をつけたほうがいい点もあります。テーブルがそれなりに広くないと盤面を広げられないし、セットアップにも少し時間がかかります。あと、物語が進行型なので、一度クリアした物語は新鮮さが薄れます(ただし基本セットだけで複数の物語が入っていますし、拡張もたくさん出ているので、しばらくは遊び尽くせなさそう!)。このあたりは軽いパーティーゲームとは性質が違うので、自分の好みと照らし合わせて選ぶといいと思います。
これからのこと
というわけで、人生初のボードゲームは大成功でした!
基本セットにはまだ遊んでいない物語が残っているので、まずはそれを順番に攻略していくつもりです。そして調べたところ、『アンドールの伝説』には拡張セットがいくつも出ているらしいんですよね。新しい勇者が増えたり、未知の島々を探索する大型拡張があったり。基本セットを遊び尽くしたら、次は拡張に手を出してみたい。完全に沼の入り口に立っている自覚はあります・・・。
そしてもう一つ、はっきり分かったことがあります。私はボードゲームが好きだということ。これまで知らなかった趣味の扉が、一台のゲームによって開いてしまいました。
きっとこの記事を読んでくれている方の中にも、最初の一台で迷っている人がいると思います。もし「物語を体験できる協力ゲーム」に少しでも惹かれたなら、『アンドールの伝説』は本当におすすめできますよ。


